崖の上のポニョから2年。
ジブリ待望の新作「借り暮らしのアリエッティ」を鑑賞してきた。
ジブリの新作ということだけでなく、宮崎駿の手を離れたジブリの新作としても期待は大きい。
監督は米林宏昌。
夜に鑑賞したからかもしれないが日曜にも関わらず入場者は30名程度。
まぁ今の映画館の形態だと満員はないだろうけど。
しかし、ネットでの辛口批評をいくつかみているだけに一抹の不安。
上映時間は94分。

鑑賞してみると94分は短く感じた。
その理由は後述するとして…。
まぁなんといいますか…一言で言ってしまうと「ジブリの夜明けはまだ遠い」。
まだまだ宮崎駿先生はこれから先楽できませんね、といったところか。
序盤から終始モヤモヤしたものが…結局うっすらとした違和感を拭い去れぬままに終劇をむかえた。
脚本が浅い、薄い。
もっと突っ込んで言ってしまうと、陳腐。
単に小人のある日の出来事を切り取った話しでしかなく、考えさせるテーマもこれといってない。
「家に迷い猫がやってきてお手伝いさんに処分されそうになったけど無事逃れて家から出ていきました」っていう話となにも変わらない。
描かれているのも一日か二日の出来事で、舞台も一軒の家のみ。
小人の話だからとはいえ、こじんまりし過ぎ、小規模過ぎ。
終盤、アリエッティと少年が別れるシーン、この時点で、解決したのか?というフワフワした状態なのだかBGMにハープの音色が…「え?ま、まさか…」と思ったのもつかの間、スタッフロール…ここで終わり?!
もう少し話が続くと思っていたので、ブッツリ切られた感じがして上映時間が短く感じてしまった…そういう理由です短く思えたのは。
当たり前に描かれすぎている小人の世界へもなかなか気持ちが入り込めず。
駿監督作品では千と千尋にしてもとくに説明などなくてもどんどんその世界に入り込んでしまうが、今作でははじめからすでに「この借り暮らしてる人たちって一体…」という疑問が頭から消えず、ちっさい人が床下に暮らしてるんですか、あぁそうですか、と好奇心が完結してしまって、世界観の「その先」まで興味をそそられることはなかった。
劇中の演出も駿監督では絶対にしないだろうなぁという演出がそこかしこに垣間見えて気になって仕方なかった。
もちろんこれは「駿監督演出が絶対」ということではなく、新しい才能が生み出す素晴らしい物もあることは確かだが、今作を「駿監督なら」と思い比較しながら観てしまうと、惜しいことに明らかにクオリティの落ちる演出がいくつも見られる。
カラスが部屋へ突っ込んでくる場面然り、お手伝いさんのハルの描き方然り。
キャラの描き方も、悪役をユーモラス且つ善と悪の両面を内包したキャラクターとして表現するのが宮崎流であるのに対し、今作での悪役の位置づけとなるハルは、表情や身振りばかりユーモラスな動きで結局意地の悪いだけのおばさんになってしまっている。
また病の少年の言動も引っかかる。
アリエッティの一族に「君たちは滅び行く運命なんだ」と平気で言ってしまうのだ。
こんなセリフを駿監督は言わせるだろうか?
クレジットには「企画脚本・宮崎駿」と出るが、どうも噂ではほぼ丹羽圭子という方が担当していて駿監督は口は出さなかったらしい。
ゲド戦記同様、若い才能に、後継者に、全てを委ねてみよう、そう思ったのかもしれない。
それを考えると宮崎駿監督はとんでもなく大変だと思う。
とはいえ、もちろん今作に関わった次世代のジブリスタッフたちも「宮崎駿の名を汚してはならない」というとてつもないプレッシャーだっただろう。
今回は今後のジブリへの「寄付」ということで納得することにしよう。
しかしもう後はないぞ、ゲド戦記、アリエッティと、胸をはって駿作品の後継といえる作品は送り出せてない現状、いつまでも宮崎駿監督に負担をかけてもいられない。
真のジブリが宮崎駿監督一世代で終わってしまうのか、ジブリとしては次作が正念場だ。
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